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紀りんの館

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支援費統合・グランドデザイン(資料1)

*厚生労働省より、介護保険と支援費の統合について『グランドデザイン案』が発表されました。それにより、さまざまな問題点も浮かび上がってきました。
 以下は、「日本知的障害者協会」のグランドデザインへのコメントです。
このままでは、障害者の「自立」や地域での生活を実現できない方向なのではないか、という懸念が大きくなってきています。


「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」
   における主たる課題とその方向性について-論点整理-(案)

平成16年10月20日
財団法人 日本知的障害者福祉協会
政 策 委 員 会

1.「自立支援」の概念について
「自立支援」は、全ての障害者にとって重要である。しかし、グランドデザイン案では、「障害者介護給付」と「障害者自立支援給付」に分類するなど「自立支援」を狭義の意味でも用いており、「介護給付」の対象と思われる重度の障害者には「自立」がそぐわない印象を与えており、概念の混乱や誤解を招く恐れがある。

2.効果的・効率的なサービス利用の促進について
(1)相談支援事業者の公正・公平性と独立性の確保
相談支援事業者は、サービス利用計画案の作成、サービス調整会議の主宰、自立支援計画の作成・モニタリングなど重要な役割を担うことになり、その公正・公平性と独立性の確保に充分配意する必要がある。
(2)個別給付の利用決定に際しての審査会の客観性と柔軟性
 審査会の仕組みや運営は、客観性を確保するとともに、利用者のニーズに応じた柔軟かつ円滑なサービス提供が阻害されないよう留意する必要がある。
(3)障害程度区分における障害特性の重視
  「介護的側面」は「要介護認定基準を基本に」とされているが、現行介護認定基準は痴呆に対する評価が不充分であるなど、身体介護を中心に構成されているため、知的障害においては特にその障害特性を重視する尺度が必要である。また、反社会的行動がみられる知的障害者等への支援についても考慮する必要がある。
(4)全ての障害者を対象とする「自立支援計画」
「自立支援計画」は複数のサービス利用や地域生活移行に限定すべきではなく、「ケアプラン」として全ての障害者を対象とすべきである。
(5)ケアマネージャーの公的資格化
障害者のケアマネジメントを専門的に行う「ケアマネージャー」の公的資格化が必要である。また、公正・公平性を確保する意味からも、少なくとも準公務員的な位置づけするなどの必要性がある。

3.利用者負担について
(1)応益負担の前提としての所得保障
応益負担を導入する場合、サービス利用者が負担可能な所得保障が前提となり、生活保護(住宅扶助、医療扶助、介護扶助など)の弾力的運用などが求められる。特に18歳~19歳の無年金問題について解決する必要がある。
(2)低所得者への配慮
「負担率」について「他の同様の制度を勘案」して設定するとしているが、高齢者とは異なり、知的障害者は生来の障害のため一般的に貯蓄がなく、障害基礎年金も生活保護基準に満たない低額であることに充分配慮する必要がある。また、減免策について、「生計を一にする家族の負担能力を勘案」するとされているが、税制上の障害者扶養控除との関連を整理した上で、成人の障害者の親・兄弟の負担を避けるべきである。
(3)医療費の公費負担(自己負担分)
   現行入所施設利用者の医療費について自己負担とする方向が示されているが、知的障害者の場合、加齢に伴い一般健常者に比べ有病率が高く、様々な疾患を併せ持つ場合も多く、他の障害者等の公費負担制度と同様に、公費負担が必要である。

4.総合的な自立支援システムについて
(1)個別給付の名称
「自立支援」は全ての障害者に必要な包括概念であり、給付の名称については、「介護」と「自立支援」を対立的に用いるのではなく、「障害者介護給付」を「障害者自立介護給付」、「障害者自立支援給付」を「地域生活支援給付」などに改める必要がある。
(2)移動介護に対する個別給付
  知的障害者の地域生活にとって必要不可欠な移動介護については、個別給付の対象とする必要がある。

5.障害者施設・事業体系の見直しについて
(1)入所施設の日中活動の場とすまいの場の分離
  現行の入所施設について、ケア付き居住支援を基礎に日中の各種通所事業を選択する「障害者支援施設」に移行するとされているが、利用者のニーズに応じた様々な利用形態と地域生活移行の推進を図るため、「障害者支援施設」を居住支援サービスとして名称も改め「生活支援施設」とし、明確に日中の各種事業と区分する必要がある。なお、その上で、利用者の必要に応じ、居住支援と日中活動支援を一体的に提供できる仕組みとする必要がある。
(2)通所事業の機能と名称
「一般就労の困難な障害者が創作活動や工賃を得ることができるような活動等を行う」通所事業の名称を「生活福祉事業」としているが、日中活動の場としてそぐわないものとなっているので、例えばその機能に着目した「活動・就労事業」等に改める必要がある。
(3)「自活訓練ホーム」(仮称)の必要性
  障害者支援施設からの地域生活移行や親の家からの独立、グループホーム移行にあたり、より円滑な移行を推進するうえで、居住支援サービスの新たな機能として、有期限の「自活訓練ホーム」(仮称)が必要である。
(4)グループホーム利用者の日中活動
グループホームは、「日中は生活訓練、就労移行支援等の通所事業を利用する障害者を対象に」とされているが、利用者個々のニーズに対応するうえで、限定的にすることは望ましくない。
(5)グループホーム利用者のガイドヘルプ利用
グループホーム利用者にとって地域生活や社会参加を推進するうえで、ガイドヘルプは欠かせないものであり、利用しやすい体制を整備する必要がある。
(6)重度の障害者個々にも対応できる支援体制
実態として、グループホーム利用者の中に重度の障害者が居る場合も想定され、それらにも対応できる支援体制が望まれる。
(7)住所地特例の継続
市町村の費用負担等支援体制に混乱を招かないよう、ケアホーム・グループホーム利用者について住所地特例を継続する必要がある。

6.新たなサービス体系に適合した報酬体系の導入について
一部の事業について事業所ごとに実績に応じた「評価」を行うとしているが、利用者個々人に対する自立支援計画(ケアプラン)に基づいた個別支援計画によるサービスが適切に提供されているか否かが最も重要であると考えるが、事業実績を客観的に評価するうえでの基準や尺度について充分な検討が必要である。
 
7.就労支援プログラムとケアマネジメントについて
 自立支援計画(ケアマネジメント)と就労支援プログラムを整理、連携させ、効果的・効率的なケアマネジメント体制の整備を図る必要がある。

8.障害児施設・事業のサービス体系の見直しについて
児童期は育ちのライフステージにあり、24時間を通した生活の中で発達支援が求められるが、サービス体系ならびに用語や呼称が、実態に対してなじまない部分が多くみられるところから、全般的な見直しが必要である。

9.新たな制度に関する当事者への情報提供について
  現支援費制度の導入の際には、制度の周知、理解の促進については、事前に行政機関や事業者などを中心に行われてきたが、本来、まず理解を求めなければならない利用者並びにその家族に対しては不充分であった。この度の新たな制度を施行するにあたっては、当事者に対して、事前に充分な情報提供と理解の促進に努める必要がある。
                                    
「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」における主たる課題とその方向性について論点整理(案)について次の通り追加する。(平成16年10月27日)

2.効果的・効率的なサービス利用の促進について
◆相談事業所の指定について
 相談支援事業の独立性を確保し、利用者が相談支援事業者を選択できることが重要である。また、現在、利用者からの身近な相談機能を果たしている事業所も少なくない。そのため、相談事業者は、市町村からの委託でなく、一定の要件を満たす事業者が都道府県から事業指定を受ける方式が望ましい。

3.利用者負担について
◆「障害者支援施設」における個室利用・長期利用者への施設利用料負担(居住費)については、利用者の過重な負担とならないよう、慎重に検討すべきである。

5.障害者施設・事業体系の見直しについて
◆国・都道府県・市町村の役割分担に関して、各事業を実施する事業者は、介護保険・支援費制度と同様に各都道府県等による指定を受ける制度とするべきである。

10.制度改革の協議について
◆今後の制度改革にあたっては、知的障害者福祉サービスの低下とならないことを前提に、当協会と綿密な協議を行うことを望む。


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